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スポーツにケガはつきものです。しかしケガを恐れていてはスポーツはできません。そんな気持ちでスポーツに参加したり、指導したりしている人も多いでしょう。

確かに柔道、空手などの格闘技やラグビー、サッカー、アメリカンフットボールなど同じフィールドで敵、味方に別れてプレーするようなスポーツでは、相手選手と接触する機会も多く、コンタクトプレーによってケガをする確率も高くなります。特にプロなど競技レベルが高くなればプレー自体も激しく、練習量も増えるので、ケガをしないように日ごろから自分の体の調子、いわゆるコンディショニングには気を使い、体力や技術の向上に努める必要があります。

ケガのために試合に出られない選手は、結果を残すことができず評価されません。したがって良い選手である第一条件としてケガが少ないということが挙げられます。競技レベルでスポーツをする選手は、自分の参加するスポーツの特性を理解し、日ごろから筋力訓練や、基礎的なトレーニング、ストレッチングなどのコンディショニングに努めることは最低の必要条件です。一流選手の華やかなプレーの陰には必ず地道なトレーニングや努力が隠されているものです。

一方、スポーツとは危険なものであるという意識をもたずに、スポーツに参加している人も多くいます。いわゆるレクリエーションスポーツや健康スポーツです。しかしスポーツである以上、日常の生活より強いストレス、負荷を体にかけることになります。そういった認識をもたずに気軽にスポーツに参加すると、思いがけずケガをすることになります。  日ごろ体を動かしていない人が運動会に参加してアキレス腱を切ってしまったり、スキーでひざの靭帯損傷を起こしたり、最近ではスノーボードでの転倒によるひじや手首の骨折などが目立ちます。気楽な気持ちで行ったスポーツによってケガをして後遺症が残り、人生が狂ってしまうこともあります。最悪の場合には命を落とすこともあります。

私はスポーツ否定論者ではなく、スポーツ推進論者です。運動不足、ストレスの多い現代社会において肉体的にも精神的にも健康であるためには、身体を動かすことは大変有意義なことであると思います。しかし、整形外科医としてスポーツによってケガや故障を起こした人と接することがあまりにも多く、ケガを予防し安全にスポーツが行われるためには、スポーツに対する取り組み方を、今一度再認識していただきたいと思います。

スポーツによるケガと病気

1.コンディショニング

実力がありながら、本番で自分の力を出し切れない選手は多く見られます。競技スポーツは結果が物を言う世界ですので、結果が悪ければコンディショニングに失敗したと判断されます。

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一部の恵まれたチームや選手には、コンディショニング専門のスタッフやコーチ(トレーナー)がいることもありますが、多くは指導者の経験や勘に頼って行われています。本来ならばコンディショニングの調整方法は選手個々によって違うべきですが、少人数の指導者によって多くの選手管理が必要な場合が多く、画一的に行われているのが現状です。  監督、コーチが選手の実力、コンディションを的確に判断し、選手が全面的に監督を信頼できたときに、高橋尚子選手のように金メダルが生まれてきます。

コンディショニング不良によって疲労が蓄積してきたときに、最も出現しやすいのが腰痛です。腰痛は人間が二本足で立つようになって、手を自由に使うことによって得られた文明の代償として、人間に背負わされた苦悩であると言われています。

つまり、立ち上がることによって、上半身の重みを腰骨で支えるという構造上の無理が生じています。さらにほとんどのスポーツ動作では、体幹の伸展、屈曲、ねじれを必要としているので、スポーツ選手の腰椎には大きな負担がかかり、腰痛が発症しやすくなります。

同じような練習や試合を行っていても、腰痛を訴える選手と何ともない選手がいます。一般的には腰痛が出やすい選手には、姿勢が悪い〈猫背の人や出尻の人)、腹筋が弱い、下半身の筋肉の柔軟性が悪い、フォームが悪いなどの傾向が見られます。

身長が伸びる発育期には、骨の強度が十分でないため、運動のし過ぎによって、腰椎の一部(椎弓〉に疲労骨折(腰椎分離症)が起こりやすいので、特に注意が必要です。また中腰姿勢で無理をすると、椎間板に負担がかかり、椎間板ヘルニアとなることもあります。

スポーツ選手の場合、疲労の蓄積による筋肉性の腰痛が圧倒的に多いと思われます。しかし発育期の選手や下肢のしびれ、筋力低下を伴う腰痛は、早急に専門医による診察を受けることをすすめます。

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使い過ぎによるひざ関節痛の場合は、関節の腫れや圧痛(押さえての痛み)はあまりありません。安静にしていれば痛みもなく、我慢をすればスポーツの継続も可能であり、治療のタイミングが遅れてしまうケースも多く見られます。特に大腿の前部にある大腿四頭筋、膝蓋骨(皿)、膝蓋靭帯、脛骨結節(膝蓋靭帯が骨にくっつく場所)は膝関節伸展機構(図1)といって体重を支持するときに最も負担がかかり、スポーツ選手では使い過ぎによる痛みが出やすい部位です。その予防としては、大腿四頭筋の筋力強化や運動後のアイシング、ストレッチングなどを十分に行うことが大切です。

一方、ひざ関節をねじってケガをした場合に、医者にかかってレントゲン撮影を受け、骨折もなく骨に異常がないと診断されても安心してはいけません。ひざ関節は骨、靭帯、半月板など非常に複雑な構造(図2)となっているため、痛みの原因が何によるものなのか診断が難しい関節です。ひざ関節に血や水がたまっている場合、関節の中でひっかかる感じがする場合、関節が不安定でぐらぐらする場合などは、靭帯や半月板を痛めている可能性が高く、MRI(核磁気共鳴画像)検査や内視鏡〈関節鏡)検査を受けた方がよいでしょう。ひざの靭帯損傷などはスポーツ種目によっては致命傷となるだけでなく、その後の日常生活にも支障をきたすようになる場合があります。

最近は靭帯や半月板手術も内視鏡でできるので、入院期間も短く、手術成績も優れています。以前は体にメスを入れることをスポーツ選手は嫌がっていましたが、最近は早く確実に治す意味から、プロの選手をはじめとして、積極的に手術を受けるようになっています。ひざ関節の痛みや不安定感のため、十分にスポーツができないと感じている方は、一度整形外科専門医にかかることをおすすめします。

3.肉離れ 安易に考えないで

スポーツによって疲労が蓄積してくると、様々なスポーツ外傷や障害が出やすくなります。特に腰痛やひざ関節痛が多く見られますが、肉離れも注意しなくてはなりません。ダッシュやジャンプ動作の多い陸上競技(短距離走、ハードル)、サッカー、ラグビー、テニスなどは肉離れの起こりやすいスポーツです。 肉離れとは、瞬間的に筋肉や筋膜が伸ばされて、その一部が切れてしまうことです。大腿の裏側(ハムストリングス)や内側(大腿内転筋)、ふくらはぎなど下肢によく起こります。

筋肉の損傷程度によって軽症、中等症、重症の3段階に分類されますが、軽症であれば全治まで1〜2週間、重症であれば2〜3カ月を要します。肉離れくらいたいしたことはないと考えていると、再発を繰り返し、特に陸上選手では致命傷となることがあります。肉離れの原因としては、筋疲労、筋肉の柔軟性の低下、筋力・筋持久力の低下やアンバランス(筋力の左右差や屈筋と伸筋とのアンバランス)、ウォーミングアップやストレッチングの不足などが考えられ、特に寒い日や硬いグランドでの練習時には要注意です。肉離れを起こしたら、応急処置として内出血や腫れを最小限にするため、RICE処置(R=安静、㈵=冷却、C=圧迫、E=挙上)を48時間まで行うことです。軽症でも2、3日、重症では1週間ほど安静にし、その後は少しずつ温めながらストレッチングや筋力訓練を開始します。

スポーツ復帰の目安としては、患部(肉離れを起こした筋肉)をストレッチングしても痛みが出ないこと、患部を押さえても痛みが出ないこと、力を入れても患部に痛みがなく、十分に筋力が回復していることなどです。完全に治りきらない状態でスポーツに復帰すると再発しやすいので、絶対に焦らないことです。

再発防止のためには、ウォーミングアップやクールダウン時にストレッチングを十分に行うこと、傷めた筋肉とその周囲の筋肉とをバランスよく鍛えることです。寒い日や疲労の蓄積した日には、ダッシュなどのスピードトレーニングには特に気を使う必要があります。筋肉の負担を減らすために、伸縮性サポーターの装着も勧められます。

肉離れとよく似たケガとして、相手選手のひざなど硬いものが大腿の前面や外側にあたったり、けられたりして筋肉に傷が入ること〈筋挫傷)があります。この場合には筋肉が大変出血しやすいので、ケガをした直後の安静、冷却が特に重要です。手術を必要とする場合もあるので、専門医を受診したほうがよいでしょう。

4.肩のケガと故障

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肩の外傷は転倒によって起こることが多く、格闘技(柔道、相撲)やコンタクトスポーツ〈ラグビー、アメリカンフットボールなど)で多く見られます。骨折や脱臼が起きれば変形や強い痛みが出るので、医療機関でレントゲン検査を受け、整復、固定などの処置を適切に受ける必要があります。

初めて肩関節が脱臼した時は、3週間の安静、固定が必要です。その後肩関節周囲の筋力訓練を行います。脱臼を繰り返す場合には、関節軟骨が削れて、ますます脱臼しやすくなっていますので、コンタクトスポーツを続けるならば手術をした方が良いでしょう。

肩の使い過ぎによる痛みは、手を挙上して行うスポーツによく起こります。代表的な動作は、投球、バレーボールのスパイク、テニスのサーブ、水泳などです。日常生活では挙上位で手を使うことが少なく、そのような動作での筋肉は鍛えられていません。したがって使い過ぎによって筋肉疲労が起きやすく、痛みが出現します。  この時期であれば安静と筋力訓練によって症状は軽快します。しかし痛みを我慢して投球動作などを繰り返していると、筋肉や腱の炎症が起き、筋力低下や関節の動きも悪くなります。またフォームも崩れて悪循環に陥り、機能回復までに長時間を要するようになります。

肩の痛みが出たら、まず痛みのある間は投球など痛みの出る運動は中止することです。痛みの出ない方法で肩関節周囲の筋肉(特に腱板)を強化し、ストレッチングなどによって筋肉の柔軟性と関節の可動域を確保します。運動後にはアイシングを行い、炎症の再発を抑えながら、肩関節機能を再獲得するようにします。

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頚椎は4〜5kgもある頭部を支え、また肩を介して両腕が首からぶら下がっており、首の筋肉は常に緊張した状態になりやすく、疲労がたまり筋肉が硬くなると、いわゆる「肩こり」となります。また頚椎は、胸椎や腰椎に比べてねじれや前後方向などの運動性が大きく、脊柱の中ではケガをしやすい部位です。

首のケガとしては、骨や椎間板には異常のない単なる頚部捻挫、椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫する椎間板ヘルニア(図2)、頚椎の骨折や脱臼を起こして神経損傷(脊髄損傷)を起こす場合など、症状にも段階があります。頚椎の真ん中には脳から四肢、内臓へと続く大切な神経である脊髄(頚髄)が走り、外傷によって首で神経損傷を起こすと、手足の麻痺や、最悪の場合には死に至ることもあります。

したがって、首のケガをした場合には、神経損傷を起こしているかどうかの判断が重要です。まず意識や呼吸をチェックしてショック状態の有無を確認し、次に神経損傷があるかどうかを調べます。神経損傷がある場合には、呼吸がうまくできない、手足が思うように動かない、手足のしびれ、知覚障害が出現します。

スポーツ活動で首を痛める場合は、ラグビーでのスクラムやタックル、格闘技(柔道、相撲、レスリングなど)での衝突、体操〈鉄棒、跳馬など)やトランポリンでの転落、水泳による飛び込みなどが多く見られます。  スポーツの現場において、ケガの程度を判断することは実際にはなかなか困難であるため、首のケガをした場合には、すぐにスポーツ活動を中止し、痛みの部位、手足の動きや知覚をチェックし、異常のみられる場合には搬送時に頭、頚部の固定を確実に行い、医療機関に送ることが急務です。

症状が軽くても手足のしびれが残る場合には、スポーツ復帰する前にMRI(核磁気共鳴画像)検査で、神経の状態を調べておいた方がよいでしょう。

首のケガの予防としては、首は大切な部位であることを十分認識し、正しい技術の習得、実力以上に無理をしないこと、プロテクター、器具、用具の整備、頚部の筋力訓練に努めることです。

<MRI>核磁気共鳴を用いて軟部組織の病変を描写する画像診断法。診断時、無侵襲で痛みがないことが長所。

6.成長期のオスグッド病

オスグッド病は、代表的な成長期のスポーツ障害です。小学校高学年かち中学校2年生までの、身長が一番伸びる時期に起こりやすく、ジャンプやダッシュ、キックなど大腿の前の筋肉(大腿四頭筋)をよく使うスポーツ(サッカー、バスケットボール、バレーボールなど)を行っている子どもに多く見られます。 この時期は、骨の急速な発達に対して、筋肉や腱の成長が遅れ、筋肉が過緊張状態となり、骨への付着部に負担がかかりやすくなります。骨や関節が未熟であるために、運動量が多すぎると筋肉(大腿四頭筋)に引っ張られ、お皿(膝蓋骨)の下の骨が飛び出してきて、痛みが出現します。

軽症の例では、飛び出した骨を押さえたり、運動量が増えたりしたときに痛みがありますが、スポーツをやめる必要はなく、痛みの強さに応じて運動量を加減すればよいでしょう。筋肉の柔軟性の悪い子どもに発症しやすく、大腿四頭筋のストレッチングを運動前後に十分に行うこと、運動後には約10分間、飛び出した骨の周囲にアイシングをするとよいでしょう。

運動をしているときに痛みが強い場合には、サポーターや装具を着用して運動を行い、局所の負担を減らします。それでも痛みがある場合には、スポーツ活動の中止やひざ関節が動かないよう、安静目的でギプス固定をすることもあります。

一般的には骨の成長が終了すれば、痛みはなくなりスポーツ活動には全く困らない状態まで治ります。高校生や大学生になっても痛みが残る場合は、骨がはがれて遊離軟骨となっていることが多く、骨片を摘出する手術が必要となる場合もあります。

このように成長期には骨や軟骨に傷が入りやすいので、運動量をある程度制限し、3〜4日に1日は休養日があったほうがよいでしょう。またこの時期は筋肉の柔軟性が悪くなりやすいので、運動前後にストレッチングを徹底して行うことが、スポーツによるケガや故障を防ぐには最も大切なことです。

早期発見によって、後遺症をきたすことなく治るので、関節の痛みが出たら早めに整形外科を受診し、エックス線検査を受けることをおすすめします。

7.脛骨過労性骨膜炎に注意

ランニングやジャンプ、ターンの繰り返しによって、下腿(すね〉の中下3分の1の部分に痛みが出現する脛骨過労性骨膜炎(俗名=シンスプリント)は、陸上競技やバスケットボール、バレーボールなどの新入部員に起こりやすい障害〈使いすぎによる痛み)です。

すねのこの部位にはランニング、ジャンプの着地や地面をけりだすときに働く筋肉が骨にくっついており、走りすぎなどによって筋肉の付着部に炎症が起こり、痛みが出現してくると考えられています。シーズン初めで筋力が十分でない時に、運動量が急激に増えた場合や、足関節の柔軟性の悪い選手、へん平足や回内足など足の形態に問題のある選手に発症しやすく、注意が必要です。ヒール部分の硬い靴(衝撃吸収性の悪い靴)や硬い路面の走りすぎも誘因となります。

日常生活に支障なく運動時のみに痛みが出現する軽症例では、安静によって症状が早期に軽快しますが、重症になると常に患部の痛みがあり、日常生活にも支障をきたすようになります。同じような痛みで疲労骨折の場合もありますので、痛みが治まらないときにはエックス線撮影で骨に異常がないか診断を受けた方がよいでしょう。

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症状が軽快すれば、徐々に運動を再開しますが、負担がかからないように、テーピングや足底挿板を用い、足関節の過度の回内や脛骨の回旋を予防することも重要です。運動前後のふくらはぎを中心としたストレッチング、運動後のアイシングは必ず行った方がよいでしょう。

予防としては、日ごろから足関節周囲の筋力強化、下肢のストレッチングを十分に行うことが大切です。

<物理療法>器機を用いてあたためたり、電気刺激を行ったりする治療法。超音波やレーザー光線を用いることにより、体の深部まであたためることができる。

足関節捻挫の治療

スポーツによるケガで一番多いのは足首の捻挫です。スポーツ経験者であれば一度や二度は捻挫をしたことがあると思います。

足関節捻挫は、ジャンプの着地やでこぼこの地面などに、足を引っ掛けて内側にねじって外側の靭帯を痛めるのが一般的です。

ケガをしたら内出血やはれがひどくならないように安静を保ち(Rest)、氷で冷やし(Icing)、包帯などで圧迫し(Compression)、心臓よりも高い位置に挙上する〈Elevation)、いわゆるRICE処置を早急に行うことが応急処置として重要です。

捻挫といっても、靭帯が少し伸びた程度の軽症から、完全に切れてしまう重症まであり、損傷程度によって治療方法や治療期間が変わってきます。軽症であれば湿布やテーピング固定で治療しますが、はれがひどく、痛みで足がつけないようであれば、靭帯の完全断裂や骨折が疑われます。その場合には、ギプス固定や手術が必要となることもあり、医療機関でレントゲンを撮ってもらい、適切な診断を受ける必要があります。

足関節捻挫後のスポーツ復帰の基準としては、足首の動く範囲が反対側(健側)と同じであること、筋力が十分に回復していること(ふくらはぎの筋肉が健側と同じくらい太くなっていること〉、ジャンプしても痛みがないことなどです。そのためにはリハビリテーションが重要です。捻挫をした足が完治していない状態で無理をしてスポーツに復帰しても、ケガをした足で体重を支え、踏ん張ることができなければ、再び捻挫を繰り返したり、今度は反対側の足首の捻挫をしてしまうこともよく見受けられます。

子ども・女性・高齢者のスポーツ

女性のスポーツ障害

近ごろではテニス、スキー、ゴルフだけでなく、従来いわゆる男性のスポーツと考えられていたサッカー、ラグビー、野球などの分野にも女性が積極的に参加するようになってきました。その結果、女性のスポーツ人口がずいぶん増えていますが、スポーツをするにあたって女性特有の問題もあります。

まず幼児期から成長期におけるスポーツとの関わり方は男女ともに大きな違いはありません。骨や関節軟骨が未成熟なこの時期には、特定の関節などに負担がかかり過ぎないように、運動量などに注意して行えばよいでしょう。

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一方、思春期の女性の最大筋力は、男性の約60〜70%、持久力も約60%と弱く、皮下脂肪は男性の約2倍と多いため、体重が増え、体重あたりの筋力を比較すると男性よりかなり劣っています。その結果、体勢の悪い状態などで自分の体重を支えきるだけの筋力がなく、ジャンプの着地の時などにバランスを崩して、膝や足首をひねって靭帯損傷を起こしやすいと思われます。

このような筋力面のみならず、女性は男性に比べて関節のゆるみも大きく、靭帯損傷や関節への負担もかかりやすいといわれています。

また女性が激しいスポーツに参加する場合、特にマラソンや体操などでは、心理的、生理的ストレスによって、月経の発来が遅れたり、その後も月経不順や無月経などの月経異常に悩む選手がしばしば見受けられます。これは月経周期の開始と維持には体脂肪の量が関与し、体脂肪が一定レベル以下になると月経機能が止まるからといわれています。  しかし、多くは激しいスポーツ活動をやめれば月経異常も改善し、その後の性機能には問題はありません。6カ月以上無月経の場合には、婦人科の先生によく相談したほうがよいでしょう。

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スポーツ指導者や保護者は、成長期の身体的特徴を理解し、子どもたちの発達段階に応じた適切な運動を考えることによって、健全な心身の発達が促進されるよう心がけるべきです。

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このように、骨や関節が弱い成長期の理想的なスポーツのあり方は、全身的な発育、発達をうながすようなものであるべきです。体の一部分のみに負担がかからないようにし、あまり技術練習にかたよらず、基礎体力づくりを主眼にしたほうがよいでしょう。またこの時期は、同じ年齢でもずいぶん体格や体力の個人差が大きいので、全員に同じレベルでの練習を強制しないで、個人個人の技術、体力に合わせた練習計画が立てられれば理想です。あまり目先の勝負にとらわれず、将来に目を向けて子どもたちを見守りたいものです。

成長期のスポーツ障害は、早期に発見し対処すれば後遺症もなく治ります。ですから子どもたちの痛みには常に気を配る必要があります。

子どもたちは、試合に出たいという欲望や、休むとレギュラーポジションを他の選手に取られてしまうなどの理由によって、痛みを訴えない場合もしばしばみうけられます。

野球肘であれば、投球フォームに変化がみられ、肘が完全に伸びなくなります。オスグッド病であれば、走るときに足を引きずるようになります。こういった変化を注意深く観察することは指導者の責任であると思います。

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かつてスポーツといえば若者が行うものと考えられていましたが、近年では社会情勢の変化によって、中高年者の余暇時間が急増し、健康の維持増進、生活習慣病予防のために多くの中高年者がスポーツに参加する時代となってきました。しかし運動に対する間違った理解、加齢現象など生理学的変化についての知識不足などによってスポーツ障害を生じ、整形外科を受診する患者さんも増えています。

体力の年齢的変化を調べますと、筋力はトレーニングによって強化でき、20歳代にピークとなりますが、30歳代では、それを維持していくのがやっとです。40歳代では、筋肉や骨格系を支配する神経の機能が落ち、反応性、敏捷性、協調性などの運動能力が低下してきます。50歳代の運動実行能力は20歳代の最大能力レベルの75%しかなく、70歳代では50%くらいになってしまうといわれています。そして老化現象としては、体の内外の環境の変化に対して反応が鈍くなり、疲労しやすい、病的状態になりやすいなど回復力が落ち、また傷ついた組織や器官が再生し治るのに時間が多くかかるようになります。

これらのことを踏まえないで、いつまでも若いつもりで運動をすると、肥満傾向となった自分の体をもてあまし、スポーツ障害に悩むことになります。とくに若いころスポーツ選手だった人は要注意です。

整形外科的な中高年者の問題点は、骨は骨粗髭症、関節は変形性変化、筋腱は萎縮性変形が見られることです。中高年者のスポーツ障害としてはアキレス腱断裂、ふくらはぎの肉離れ、足首の捻挫、テニス肘、ゴルフ肘、ジョギングなどによって膝に水がたまったりする変形性膝関節症などがあります。

これらは、老化変形した骨、筋、腱に過度の負担がかかって発症してくるものです。中高年者がスポーツを始める前には、体重を減らす、基礎体力を高める、用具やシューズを整える、関節、筋肉などの柔軟性を獲得する(ストレッチング)など、前もって計画を立てて取り組む必要があるでしょう。

整形外科的には、加齢現象に基づく変形性疾患を予防し、いかに適切な運動を行うかが、中高年のスポーツでは重要となります。

腰痛の予防とその対策

「腰痛の経験なしに一生を終える人はいない」といわれるほど、腰痛は日常生活でもよくみられる疾患です。しかし、腰痛の原因は様々で、椎間板ヘルニアや内臓からくる場合もあり、足のシビレを伴う腰痛や安静にしていても痛みがひどい場合には、整形外科を受診し、診断、検査、治療を受けたほうがよいでしょう。今回は一般的な腰痛症について述べます。草取りや大掃除、引越しの手伝いなど普段やらないような中腰での仕事をしたり、不用意に重いものを持ち上げたり、腰をひねった時などに腰痛が起こりやすく、中腰姿勢は十分注意すべきです。また、長時間同じ姿勢で立っていたり、長時間の車の運転なども腰痛の引き金となります。痛みがひどいときには安静が第一です。膝を曲げ、腰を丸め、えびのような姿勢で横になっていれば、痛みは軽減してきます。立っている姿勢は、腰をそらすような姿勢(下腹がつきでた姿勢)は避け、下腹に力を入れ、背筋がまっすぐになる様な姿勢を心がけるとよいでしょう。痛みが強いときには、腰への負担を減らすためにコルセットを着けると効果的です。

日常生活では、中腰での家事・仕事はできるだけ避け、物を持ち上げるときには膝を曲げ、できるだけ体に近づけて持ち上げるように注意しましょう。あぐらや横座りも腰に負担がかかり、できれば椅子に腰掛けているほうがよいでしょう。しかし腰が沈んでしまうような柔らかいソファーは避けるべきです。腰や足元が冷えないように注意して、お風呂などで温まると筋肉もリラックスでき、痛みが軽くなります。太りすぎもお腹が前に出て不良姿勢となるので、体重を減らすように努力しましょう。肥満は腰痛の敵となります。

痛みが軽くなったら、腰痛体操に取り組みます。体操の目的は腹筋や背筋を強化し、筋肉や靭帯の柔軟性をよくして、正しい姿勢が保てるようにすることです。

機械文明の進歩によって、大変便利な世の中になり、私達は身体を動かすということが随分少なくなりました。現代社会は運動不足によって、足腰が弱くなり、精神的ストレスは増大し、不健康な状態になりやすく、肩こりや腰痛は、日常よくみられる症状です。つまり意識的に体を動かすようにしていないと健康の維持・増進は望めません。暇になったら、時間ができたら運動しよう思っているといつまでたっても実行できません。食事をするのと同じように、朝起きてからとお風呂上りに運動するように習慣づけ、継続することが大切です。

今回お示しする腰痛体操は、一部です。腰痛がひどい時には危険ですから医師に相談してから始めて下さい。腰痛体操の目的は、かたくなった関節や筋肉に柔軟性を改善し、腹筋を強化し、姿勢をよくすることとリラクゼーションです。ストレッチングは、反動をつけず、呼吸は止めないで、ゆっくり行うとよいでしょう。効果はすぐには表れませんが、根気よく続けることが大切です。

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